こんにちは。ライターのねぎみじんと申します。
不動産投資の損益を管理する指標として、損益分岐点と言う概念があります。
要は収入と支出がイコールになる点の値で、運用していく上で最低限どのくらいの収入なら赤字にならないかを見ることが出来るものです。
不動産投資で言うなら、主な収益は家賃なのでどのくらいの空室率でなら耐えることが出来るかという風に考えられますね。
というわけで今回は「損益分岐入居率(BER)について」まとめていきます。
なるべく分かりやすい具体例を出すのでぜひ覚えていってくださいね。
よろしくお願いします。
目次 ーtable of contents
1. 損益分岐点(BER)とは
改めて損益分岐点とは、利益がプラスでもマイナスでもないゼロの状態となった時の売上高をいいます。
利益は「売上-費用」という算式で表すことが出来ます。
よって「売上高=費用」の時が損益分岐点ということになります。
小売業で例えると、商品の販売数に応じて利益が積み上がっていきます。
でも、同時に仕入れ原価も費用として積み上がっていきます。
損益分岐点は、売上高に対応して費用(いわゆる売上原価)を引いた利益が、固定費とイコールになる時点、というように計算されます。
損益分岐点は最低限損失の出ない売上高を表して売上目標の最低ラインとして利用されます。
不動産投資で例えるなら、売上は家賃収入で損失は空室です。
単純に考えれば運営の固定費より収益が多くなる空室数のラインは何部屋なのかという風に考えられるわけですね。
2. 一棟投資の場合の損益分岐点
それでは実際に計算してみたいと思います。
まず、損益分岐点の計算方法は、
入居率の損益分岐点=(年間運営費+年間返済額)÷入居率100%時の家賃収入
です。
そこで以下の一棟アパートの例で計算してみます。
・年間運営費:120万円
・年間返済額:360万円
・入居率100%時の家賃収入:720万円
・年間返済額:360万円
・入居率100%時の家賃収入:720万円
この物件の場合は、
(120万円+360万円)÷720万円=約66.7%
となります。
つまり100部屋あった場合で仮定すると、67部屋が埋まっていれば黒字で66部屋が埋まっている状態だと赤字というわけです。
現実的に10部屋だとしたら7部屋埋まっていれば黒字で6部屋だと赤字ということですね。
3. 区分マンションの場合の損益分岐点
それでは区分マンションの場合はどうでしょうか。
区分マンションは1部屋しか購入しない場合もあると思います。
そのため入室期間で考えます。
以下の例で考えてみましょう。
・年間運営費:20万円
・年間返済額:120万円
・1年間住んだ場合の家賃収入:180万円
・年間返済額:120万円
・1年間住んだ場合の家賃収入:180万円
この場合は、
(20万円+120万円)÷180万円=約77.8%
となります。
77.8%とはつまり、毎年約9.3ヶ月住んでくれれば黒字でそれ以下だと赤字ということになります。
ただし区分マンションの場合は、将来の年金対策や団信などが目的でサラリーマンの方が長期的に保有することが前提の場合が多いので、多少の赤字でも積み立てのような感じで問題なく運用をすることも多くあります。
4. 売却まで考えた損益分岐点
不動産投資は運用だけではなく、売却時までを含めたトータルの損益分岐点も考える必要があるでしょう。
いわゆる出口戦略です。
運用時の支出に加えて、売却時の支出や購入時の支出も合計したトータルの支出と、運用による家賃収入および売却時の売却収入とがイコールになる売却価格が、売却時の損益分岐点ということになります。
売却時の支出には売却時の諸費用と売却時の残債が含まれ、購入時の支出には購入時の諸費用と頭金が含まれます。
売却時の損益分岐点となる売却価格を計算式にすると以下のようになります。
売却価格+家賃収入-(運用時の支出+売却時の支出+購入時の支出)=0
一例で計算してみましょう。
以下の物件を10年運用して売却する場合の損益分岐点を出してみます。
・購入価格:3,000万円
・借入金額:3,000万円
・融資条件:2%、35年
・表面利回り:6%
・年間諸経費:20万円
・購入時諸経費:200万円
・売却時諸経費:200万円
・借入金額:3,000万円
・融資条件:2%、35年
・表面利回り:6%
・年間諸経費:20万円
・購入時諸経費:200万円
・売却時諸経費:200万円
10年間の運用収入は3,000万円×表面利回り6%×10年=1,800万円で、
10年間の運用支出は約10万円×12月(ローン返済額)+20万円(諸経費)=1,400万円となります。
これに購入時と売却時の諸経費、売却時の残債返済額を合計します。
トータルの支出は、1,400万円+200万円+200万円+約2,345万円(残債返済額)となります。
損益分岐点となる売却価格は、10年間の家賃収入1,800万円と売却価格を足した金額が4,145万円になればいいので、4,145万円-1,800万円=2,345万円となり、つまり2,345万円以上で売れたらプラス収支というわけですね。
シビアに計算するなら空室率も考慮した家賃収入額で計算してみてくださいね。
いかがだったでしょうか。
今回は「損益分岐入居率(BER)について」紹介してみました。
よりプラスの可能性を上げるには物件を長く保有するのが良いのかもしれません。
なぜかというと売却時の大きな支出である残債返済額を減らすことが出来るからです。
運用時にプラスになっていればさらに手元のお金も残っているので、仮にあまり高い価格で売れなかったとしても最終的にはプラスになりやすいです。
運用時の損益分岐点を把握しておくことは損益をプラスにするために大切です。
ただし売却時の損益分岐点も重要です。
その辺りもきちんと意識してトータルの損益がプラスになれるようにしたいですね。