不動産投資は投資である以上、いくつかのリスクが伴うものです。
そのリスクの中でも、時に注意すべきなのは「空室リスク」でしょう。空室からは家賃収入を得ることはできませんし、その状態が長く続けば建物の劣化も進みやすくなります。その上、たとえ家賃収入がなくてもローン返済や維持管理費などは支払わなければならないため、支出だけが増えてしまうという状況もありえるのです。
不動産投資を続けていればこの空室リスクは避けては通れないもの。ならばしっかりとした対策を抑えておくことは必須と言えるでしょう。
そこで今回は、空室リスクを抑える方法から対処法までをご紹介します。
目次
1. 空室リスクとは?
2. 空室リスク対策の基本
3. 空室リスクを抑えるために
4. まとめ
1. 空室リスクとは?
空室リスクとは、所有している物件の入居者が見つからず空室が続き、賃料が入らない状態になるリスクを指します。賃料が入らなくてもローンの返済はありますし、マンションであれば管理費や修繕費も支払わなくてはなりません。数ヵ月ほど空室が続くことも珍しいことではないため、あらかじめこのリスクを想定し資金をストックしている方も多いでしょう。
しかし、想定していた以上の長期間にわたった場合、その分支出は悪化してしまい運営が厳しくなる可能性もあるのです。
そもそも現在の不動産投資は、物件を安く買って高く売るキャピタルゲイン狙いではなく、継続的な家賃収入を得るインカムゲイン狙いが大半であり、そこには「毎月家賃を得るための入居者がいる」という前提が存在しています。
不動産投資には金利上昇リスクや家賃下落リスクなど他にもリスクがありますが、空室リスクは収入そのものが無くなるどころかマイナスにもなるという非常にダメージが大きいもののため、可能な限り避けたいものなのです。
2. 空室リスク対策の基本
入居者はいずれ必ず退去するものですから、空室が全く出ない物件というものは存在しません。しかし、「空室期間が短い傾向の物件」は確かにありますので、こういった物件を選ぶのが空室リスクを減らす基本になります。
では、どのような物件を選べばよいのでしょうか?
■空室リスクの低い物件探し
なによりも「人口の多い首都圏」の物件であることが大前提です。
この場合の首都圏とは東京都を中心とした大都市部のみであり、その周囲の都市部を含むことはありません。
日本は年々人口が減少傾向にありますが、東京都に限り圧倒的な人口を誇っています。コロナ禍によってはじめて東京一極集中から流出へと転じたものの、周囲の都市部との差は簡単に埋めることはできないのです。
空室リスクの低い物件を選びたいのであれば、東京を中心とした首都圏での物件を探すことをおすすめします。
■ターゲット層の見直し
居住用を投資物件に選んだ場合、単身者向けかファミリー向けかを決める必要があります。
この場合は、単身者をターゲット層にしたほうが空室リスクを抑えることができるでしょう。
東京の大都市部であれば特に、独身の社会人や学生、単身赴任で家族と離れて暮らしているような単身世帯が最も多くなっています。現時点だけではなく、今後もこの傾向は変わらないと考えられていることから、ターゲット層を単身者に絞ることが空室リスクを抑えるカギにもなるのです。
■単身者向けの間取りを選ぶ
単身者をターゲットに絞るのであれば、ワンルームマンションを投資物件に選びましょう。
基本的に単身者は広い部屋を必要としないことが多く、広くても1LDL程度の間取りを希望するケースがほとんどです。また、単身者は利便性の高い立地を重視する傾向が強いため、首都圏のターミナル駅やその沿線上の街が選ばれやすくなります。
3. 空室リスクを抑えるために
空室リスク対策の基本は上述の通りですが、あくまでも基本であり「空室リスクの低い物件」にすぎません。
賃貸運営を続ける上で、空室リスクを抑えるためにできる方法がこちらになります。
■相場や市場を意識した家賃設定の見直し
空室リスクの低い物件を選んだとしても、いずれ空室は発生するものです。実際に空室が出た場合は、時期や周囲相場、市況を確認した上で家賃設定の見直しを行いましょう。
ただし「必ずしも相場より安くなければ入居希望者がみつからない」などということはありません。特に賃貸需要が高まる1月から3月までといった繁忙期であれば、多少高めの設定であろうとも見つかる可能性は高くなります。もちろん立地や条件がよければ、その可能性はさらに高まるでしょう。
家賃を高く設定したまま空室が続いてしまうリスクを回避すると同時に、家賃を必要以上に下げてしまうという状態に陥ることのないよう、時期、相場、市況の確認は必須と言えるのです。
■リフォームやリノベーションの実施
立地は変更することはできませんが、リフォームやリノベーションを行うことで住み心地を向上させることは可能です。新築のようにすることはもちろんのこと、設備を最新のものに変更するだけでも賃貸ニーズを上げることができるでしょう。
また、Wi-Fiや宅配ボックスの設置など、賃貸物件に求められる設備も変化していくため、それらに対応できるかどうかも大きいかもしれません。
■敷金礼金の撤廃とフリーレントの導入
近隣に競合物件が存在している場合、より条件の良いほうが選ばれるのは当然のことです。
この場合、敷金礼金を0円にする、または一定期間家賃を無料にするフリーレント期間を設けるなどといった“アピールポイント”を作るという手段があります。その分の収入は当然望めませんが、「引っ越しにかかるお金を少しでも減らしたい」と考えている入居希望者にとって、敷金礼金なしやフリーレント期間は非常に魅力的にうつるでしょう。
家賃の値下げを行うという方法も存在していますが、最初に思い切ってフリーレント期間を設け、入居者を手早く集めてしまったほうが長期的に見ても利益が良くなるケースも多いのです。
■サブリースという選択肢も
サブリースをめぐるトラブルが度々ニュースに取り上げられるため、「サブリース」に良いイメージを持っていない方も多いかもしれません。しかし本来、サブリースとは空室リスクを回避するための手段なのです。
注意点やリスクを把握した上での利用であれば、対策法の1つとして選択肢に入れるのも良いでしょう。
■既存の入居者との関係性の重要性
見逃してしまいがちですが、今現在住んでいる入居者を大切にすることも空室リスク対策であると言えます。
問題点を無くし、「住み続けたい」と思うような環境を作り出すために、こまめな物件の確認や管理会社との連携を重視しましょう。
単身者をメインターゲットとするデメリットとして「入居者の出入りが激しい」ということが挙げられます。つまり、空室が発生するリスクからは逃れることはできないのです。
しかし良い環境が作れれば、可能な限り長く住んでもらうこともできますから、空室が発生する回数も抑えられるでしょう。
4. まとめ
不動産投資を行うにあたって、空室リスクは必ず存在しているものです。空室リスクに伴う損害額は他のリスクによる損害額よりも大きなものになりやすく、時には致命的なものになることもあり得るでしょう。
そのため、空室リスクには「備えること」が大前提であり、できるだけ損害が軽減されるようこまめな対策を続けることが運営を長く続けるカギになるのです。
予測と対策が難しい他の投資と比べ、リスクへの対応方法がしっかりと確立されているのが不動産投資です。今回ご紹介した基本を守りながら慎重な検討と対策を重ね、安定した運用を続けましょう。
小雪